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英雄伝説VI 空の軌跡 Second Chapter 公式パーフェクトガイド
新紀元社 『英雄伝説』はジュブナイル【juvenile】である。それは間違いない。つまり若者向けの物語なわけだ。が、それは子供だましとはまったく違うはず。 FCラストで明らかにされたヨシュアの過去に代表される『空の軌跡』世界のありようは、とてもシリアスで重い(ものを含む)。それを表現するためには、人間の醜さや愚かさをもっと積極的に描きだす必要があっただろう(むろんジュブナイルなのだから、年少者のために表現をやわらかくする配慮や、重くなりすぎないようにする工夫をした上での話だが)。すくなくとも、これだけは断言できる。人間の生き様や国家の在りようなどを描くのに「死」を隠そうとするのは、それこそ「欺瞞」に他ならないと。 生々しくすべてを描けなどとは言わない。しかし、強力アーツやSクラフトを使ったり、地震が起こったり、さらには竜が襲来しても誰ひとり死なない、なんて、さすがに不自然にすぎる。物語の説得力が大幅に失われてしまっている。時にあっけなく訪れる「死」という結果があってこそ「生」は輝く。「死」のない「生」など絵空事にすぎないのだから。 この問題点はFCにおいても同様ではあった。しかしFCはそれほどシリアスな物語展開ではなく、深刻な命のやり取りもなかったので、それほど気にはならなかったのだ。 が、SCでは<執行者>という強敵と命がけのバトルが再三に渡って繰り広げられる。それなのに敵味方とも誰も死なないってのは……ご都合主義にすぎて真剣みが無いったら! たとえこちらが戦闘で勝っても、相手は偉そうに余裕な口ぶりで「ほう。なかなかやるじゃないか」みたいなことを言ってドロン。しかも、そのパターンが何度も繰り返されては、さすがにバカバカしくなってしまう。せっかく構築されたリアリティは薄れ、世界が非常に軽いものになりさがってしまっている。 思うにSCはジュブナイルであろうと意識しすぎて、方向性やテーマがぶれてしまったのではないか。 人間が背負わざるを得ない業である暗黒面。人は弱くそれを一人で乗り越えることはできない。しかし人は互いに信じあい、助けあい、補いあうことでそれを克服できる。それが人と人とをつなぐ絆の大切さであり、そこにこそ人として生きるうえでの喜びもある。 『空の軌跡』のテーマを言葉にすればそういうことだろう。それは作中でおもに主人公エステルのセリフとして語られている。ところがSCをプレイしているあいだに、それを実感することができるかと言うと「否」と答えるほかない。イベントで語られるエステルのセリフは確かに感動的なのだが、そういう思いに達する過程が実質ほとんど描かれていないので、なんでそんな確信を持って語れるんだよ! と、ツッコミたくなってしまう。 正確に言えばまったく描かれていないわけではないのだが、そのテーマはプレイヤー不在のイベントシーンにおいて勝手に物語られるのみ。ゲームのシナリオ上でそれがプレイヤーに自然な形で伝わってはこないのだ。残念ながらSCをプレイしていてエステルとの距離はだいぶ離れて感じられた。 本来あるべき形としては、エステルはヨシュアとの別離をきっかけに自分の弱さ(やジョゼットに対する嫉妬)など、内なる闇ともっと向かい合わねばならなかったと思う。 たとえば、こんな展開。 ――エステルがロレントに戻ったちょうどその時、特務兵の残党が街を占拠。動機は(FCで)彼女に仲間を殺されたから。人質を盾にエステルの身柄引き渡しを要求してくる。要求がのまれるまで1時間ごとに一人の人質を殺すと宣言。犯人が人質に曰く「兄弟は容赦なくロッドで撲殺された。これはその報復だ。恨むならばあの娘を恨むのだな」 エステルは事件を解決しようと単独行動にでるも失敗。ヨシュアの存在の大きさを思い知る。その後、軍と遊撃士らによる救出作戦が実行され街は開放されるが、数名の犠牲者が出てしまう。これによりエステルとロレントの住人との絆は揺さぶられる。陰口をたたく者。面と向かって非難する者。よそよそしい態度をとる者。 もはや故郷はかつての故郷ではなくなってしまう。 (遊撃士として、女王を、国を守るために特務兵とは戦った。でもそのせいで……。あたしがしたことは……) 苦悩するエステルの前に現れる少女レン。 「自分の非力を棚にあげて、反論してこないと分かっている相手をたたく」 「ちょっと前までお姉さんたち遊撃士のおかげで国が救われたって言ってたのに」 「くだらない人たちはくだらない事を言うものね。ほんとうに」 「信念を貫くために全力をつくした。その上での結果でしょ?」 「多少の犠牲者が出たからって、気にすることなんかないわ」 それだけ言うと彼女はどこへともなく消えてしまう。少女の言葉とそれを肯定したくなる自分に衝撃を受けるエステル。彼女の言うことは正しいのだろうか? いや“多少の犠牲”だなんて! 人の命をそんな言葉で片付けていいはずがない! こんなんじゃダメだ。心も身体ももっと鍛えなければ。そうしなきゃヨシュアを振り向かせることなんてできやしない。エステルは己を奮い立たせ強化訓練に向かうのだった――。 とか。 これじゃ重すぎってんなら、実はルシオラの幻術ってオチでもなんでもいいから、主人公エステルには“葛藤”が欲しかったところ。とにかく、もっとエステルの信念を揺さぶる必要はあったはずで、そのために、対立する信念を強烈に提示するキャラも欲しかった。そのポジションに最も近いのはレンだったと思うのだが、そこまでライバル的な存在に持ってこれなかったのが残念。 天然でお日さまみたいなエステル。そのキャラを描き出すには、FCにおけるヨシュアのような対となる存在が不可欠だったろうに。SCでのそういう関係はアガット&レーヴェにおいてはうまく出ていたのに、肝心かなめのエステルにそういうライバル的存在がいなかったのは致命的。主人公にドラマがなくが主人公として機能しているとは言えず、だからこそレンは、 ――レンとヨシュアは同じ。同じ優れた存在。同じ悲しみを理解できる者同士。横に並び立つにふさわしいのはレン。ヨシュアのためなら<結社>だって裏切る。エステルなんかに絶対ヨシュアは渡さない――! このくらいのキャラで、もっと正面から激しく対立する行動をとらせるべきだったと思うのだが。 > さらに続きを読む by のぞみまつき |
by sironekonomiya
| 2007-01-17 22:02
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