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日本ファルコムの英雄伝説6『空の軌跡』はおもしろい。
が、ひじょうにいいところで「つづく」ので、あぁんまりだぁぁぁとなった人は数多い。もちろん自分も例に漏れず、ゲームが終った当時はすごいフラストレーションがたまった。 で、エピローグを妄想して英伝分を補完したのであった。 公式サイトの掲示板にもさらしたところ、それなりに好評を得られた(ように思う)。 それからもう1年近いがセカンドチャプターは今だ未発売。イース・フェルガナのほうが先に発売される始末。つぎはSCであることを祈ってここに「妄想エピローグ」を再掲しておくことにする。 なお、もろにネタバレなのでゲームをクリアしてない人は読んではいけません。 ――ラスト直後。 「エステルくん! エステルくん!」 「う……ん? オリビエ?」 肩を強く揺さぶられてエステルは、はっと目を覚ます。 すでにあたりは明るく、あれからかなりの時が流れたことは、すぐわかった。 夢だと、何かの間違いだと思いたかった。 が、手の中に残された小さな金属製の楽器の確かな感触が、そうではないと告げていた。 「はぁ、大丈夫そうだね。いやはや驚いたよ。うるわしの王都のあけぼのを堪能しようと登ってきたら、君が倒れてるんだから。最初は死んでるのかと思って、繊細かつデリケートなぼくの心臓は危うく止まってしまうところだったよ。いったいどうしたんだい? 君のナイトも見当たらないし……?」 そばに立って不思議そうに顔をきょろきょろさせる、あまりと言えばあまりにもいつもどおりなオリビエらしい物言いに、エステルは思わずもう一度このまま床に突っ伏して寝込んでしまいたくなった。 石造りの都は、朝のひやりと心地よい空気につつまれ、早起きの鳥たちが口々にさえずり、昨日と全く変わりなく見える。少しも変わらないように見える。 「……ヨシュアはね。行っちゃった」 説明する気にもなれず、座ったまま、ぼんやりと朝日の方をながめながらつぶやく。 「ひとりで、行っちゃったんだ」 自分の口から出た言葉に、ぞくりとした。 何かが腹の底からこみ上げてきて、それが眼からあふれでそうになる。上を向いて眼をつぶり、思わずハーモニカをきつく握りしめた。 「よしたまえエステルくん」 いつになく張りつめたオリビエの声。 「血が」 そう言われて見てみると、確かに紅いしずくが城壁の石畳の上に落ちている。だが、そんなことはどうでもよく思える。ながめているうちにしずくは幾つも重なって、小さな模様をつくった。 その様子を見かねたのだろう。オリビエが横に来てしゃがみこみ、両手でもっていっぽんいっぽん指をほどきにかかった。 「ん? これは……」 もう少しですべての指がほどけそうになったとき、オリビエがつぶやいた。と同時に、 「ダメッ」 なされるがままだったエステルが、突然立ち上がりはげしく身をよじった。 オリビエを振り払い、大切な楽器を胸にかき抱く。 「これはヨシュアのもの。誰にも、誰にも渡さない!」 荒々しく燃えるような眼で盗人をにらみつけ、さけぶ。 危なく城壁に頭をぶつけかけながらもオリビエは、 「わかった、わるかった、ワカリマシタ。そ、それはヨシュアくんのハーモニカなんだね? あー、すぐに返すから、ちょっとだけ貸してくれないかな? 確かめたいことがあるんだ」 そんなことを言う。 その貼りつけたような誠実面をにらみつけ、少しためらったものの、結局エステルは楽器を相手に手渡した。『確かめたい』という言葉がなんだか気になったからだ。 オリビエは、やけにうやうやしい手つきでそれを受けとると、まずポケットからレースのハンカチを取り出し、表面についた血を丁寧にぬぐいとった。 次にルーペを取り出すと全体をなめるようにのぞき回す。 「ふむ。やはりそのようだね」 ウンウンうなづきながらそんなことを口にする。 その訳知り顔と、もったいぶった態度に、 「いったいなんなわけ?」 エステルが声を荒げる。だがそれを気にしないかのようにオリビエが尋ねた。 「ちょっと吹いてみてもいいかな? それで確定できる。現状でもほぼ間違いないと思われるけれど、実際に吹いてみてその音色を試すことが最終的な判断材料になるものだからね。こういうことは」 「……いい、けど」 ためらいながらもそう答えてしまったのは、確定できる云々という相手のセリフがいまひとつよく理解できず、なんとなく許可してしてしまったというのが実際のところだ。 そうしてオリビエがハーモニカから奏で出したのは、あの帝国との国境、ハーケン門で彼と出逢った時のそれと同じ曲だった。 「それ、なんて曲?」 エステルの問いに、演奏をわずかに中断してオリビエは言った。 「琥珀の愛」 そして再開された旋律が、哀しげな高まりの絶頂に達しようとした瞬間、 「もう止めて!」 悲痛なするどい声によってかき消された。 「……大丈夫かい?」 「……ええ、なんでもない。それよりもういいでしょ。はやく返してよ」 「ああ、そうだね」 素直にそう言ってハーモニカを手放したオリビエだったが、その声にはどことなく残念そうなものが混じっていた。 「それで? どうだったのよ実際に吹いてみて」 「ああ! ドキドキしてしまったよ」 「?」 「ヨシュアくんと間接キスしてしまったかと思うと」 次の瞬間。 エステルの体が宙を舞った。 前方宙返りからのかかと落としがオリビエの脳天につきささる。 間髪いれずに左右のパンチの連打。 続けて相手の体を駆けあがっての蹴りがあごをとらえ、そのまま後方宙返り。 着地後すかさず距離をつめ、打ち下ろしの右。打ち上げの左。 そしてトドメとばかりの渾身の体当たりがまともにぶちかまされる。 奥義『桜花無双撃』。本来は棒術具を使っての技であるが、無手にでも応用は効く。 「あんまりふざけたこと言ってると、ぶ・ん・な・ぐ・る・わ・よ」 「……も、もう、おもうさま、殴ったあと、なんだね……ぶほっ」 血を吐いたオリビエは、空中庭園の一番端の樹の根元まですっ飛ばされ、ぼろきれの様なありさまでころがっていた。 「で? 冗談抜きで何かわかったの?」 エステルは、つかつかとぶちのめした相手に近寄り見おろした。 「……あのぅエステルくん? ボクけっこう死にそうなんDEATHけど」 弱々しく訴えるオリビエに、 「いちおう手加減はしたわよ。それにあんたがあれくらいで死ぬわけないじゃない」 エステルは冷たく言い放った。 「ふ、さすがだね。天才は天才を知る、というところかな?」 そう言いつつオリビエはどこからともなく取り出した薔薇の花を頭上にほうり、導力銃を抜き撃った。あたりに花びらが舞い散る。 すると一体どういうからくりなのか? まるで何事もなかったかのようにオリビエは元気よく立ちあがったのであった……。 「うーむ。われながら華麗なる回復術」 「はいはい。わかったから早く報告しなさい。言っとくけどまたキスでドキドキとかほざいたら……」 エステルは薄笑いを浮かべながら指をポキポキ鳴らした。 「ド、ドキドキしたのは本当さ。なんといってもそのハーモニカは今や伝説的な『ハーメル・ハーモニカ』なんだからね!」 「ハーメル?」 聞き覚えのある単語だった。たしかロランス少尉が女王さまに言ったセリフの中で聴いた言葉だ。 「村の名前でね。そこに住んでいた楽器造りの名工、レーヴェって人の作品を特にそう呼ぶんだ。表面に刻まれている紋様の特徴からしても、音色の素晴らしさからしても間違いないよ。お金には換えられないけど、値段をつけるとしたら最低でも百万ミラってところだね」 「ひゃ、百万!? これが!?」 思わず手の中のハーモニカをまじまじと見つめてしまう。 「最低でもね。なんせ村自体が先の戦争中に謎の消滅、レーヴェも行方不明。そのせいもあって今はプレミアがついてるんだ」 「謎の消滅?」 「うん。戦渦に巻き込まれた様子もないのに人間や家畜、生き物だけが一夜にして忽然とその姿を消してしまって、その後誰一人としてみつかっていないんだ。なんでも発見当時、食べかけの食事が残されていたり、オーブメントが造りかけだったり、とにかく突然にどこかに消えてしまったようでね。まったくもってミステリーな話さ」 消えた村人たち。 どうしてとは思うものの、それはひとまず置いておいて、その中の一人が造ったハーモニカ。そんな貴重なものをヨシュアはなぜ持っていたのだろう? 彼は幼いころからずっとこのハーモニカを吹いていた、と言っていた。するとヨシュアと、そのハーメル村のレーヴェとはなんらかの関係があることになる。 そこまで考えると、もう居ても立ってもいられなかった。 「オリビエ!」 「はい?」 「ありがと!!」 いぶかしげなオリビエを尻目に、エステルは走り出す。 「待ってなさいよヨシュア。ぜーったい逃さないんだから!」 その眼はまっすぐ前を見つめ、もはや濡れてはいなかった。 ~fin by のぞみまつき |
by sironekonomiya
| 2005-06-02 05:01
| 妄想落書き
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